コラム
プロジェクトの成功率を2倍に上げる要件定義のコツ
システム導入・リプレイスのプロジェクトを進めていると、
「プロジェクトがスケジュール通りに進まない」
「カスタマイズの要件が膨らみ、当初予算を超過してしまった」
など、プロジェクトが上手くいかないという経験を一度はしたことがある方が多いのではないでしょうか。
以前は「プロジェクトの成功率はたったの2割」という話もありましたが、年々プロジェクトの成功率は上がってきています。
日経コンピュータの調査によると、プロジェクト成功率(品質、コスト、納期、の3つ全てを遵守できたプロジェクトを「成功」と定義します)は下記のとおりです。
◯ 2003年
プロジェクト成功率26.7%品質の遵守率46.4%コストの遵守率76.2%納期の遵守率54.9%
↓
◯ 2008年
プロジェクト成功率31.1%品質の遵守率51.9%コストの遵守率63.2%納期の遵守率54.6%
↓
◯ 2018年
プロジェクト成功率52.8%品質の遵守率78.5%コストの遵守率81.8%納期の遵守率72.3%
※出典:日経ビジネス
このように、昔に比べてプロジェクト成功率は上がっているものの、未だに約50%のプロジェクトが失敗しています。
プロジェクトが上手くいかない原因は一概には言えませんが、失敗するプロジェクトの共通点として「要件定義が上手くいっていない」ことが挙げられます。
逆に言うと、要件定義フェーズさえしっかりと完了できれば、成功率はぐっと上がるというわけです。
本コラムでは、プロジェクトの成功率を2倍に上げる要件定義のコツを具体的に3つご紹介します。
要件定義のコツ1:ユーザー部門に新システム導入後の業務をイメージさせる
システム導入ベンダーが、機能毎に検討会を設けて要件定義を進めるケースがあります。また、業務フローや実際の画面(またはモック)を使わずに要件定義を進めていることもあります。
ユーザー部門の立場からすると、新システム導入後の業務が全くイメージできません。
業務の始まりから終わりまで(販売管理システムでいうと、受注登録してから会計に仕訳データが流れるまで)を、ウォークスルー形式で議論しましょう。
※ウォークスルーとは、現場の担当者を中心に集まり、業務の始まりから終わりまでの一連の流れなど成果物の内容を順に説明しレビューする形式のことです。
新システム導入後の新しい業務フローは必須ですが、それだけではなく、新システムの画面を使いながら進めましょう。
(スクラッチの場合は画面モックです)
なぜなら、いくら机上で検討しても、実際の画面を使ってみると「やっぱりこの仕様では問題がある」「実は◯◯という業務を行うために□□という項目が必要である」といったギャップが生じるためです。
このギャップを要件定義でしっかりと埋めておくことが重要です。
要件定義のコツ2:全体→個別(各論)の流れを意識した進め方をする
業務部門でも、システムベンダーでも、要件定義フェーズですぐに個別の論点に対する議論をする人が多いです。
なぜなら、自分達が普段行っている業務がどう変わるのか、早く知りたいからです。
しかし、個別の論点に対する議論を続けていると上手くいきません。
なぜなら、全体像が不明確な状態で個別の議論を進めることで、個別最適になる可能性が高いからです。
必ず、システムのToBeや全体像、システムグランドデザインを描きましょう。なおかつ、システムグランドデザインは必ず可視化してユーザー部門と共有しましょう。
また、仮に段階的なリリースをするプロジェクトの場合は、リリース後に何の機能をいつリリースするのか、といったロードマップも可視化してユーザー部門と共有しましょう。
「今日は全体のうちのここについて議論します」という説明が要件定義の検討会の冒頭で出来ればベストです。
要件定義のコツ3:検討経緯と結論を可視化する
「どういう経緯でこの仕様になったのか分からない」
これはよく聞く話しです。
テストフェーズ(場合によってはリリース後)になって、要件定義で決めた仕様に不備があることもあります。
そんなときに「なぜこういう仕様になったのか」という検討経緯を確認した上で、新たな仕様を考える必要があります。なぜなら、業務やシステムの制約によってあえて今の仕様にしている可能性もあるためです。
検討会の議事録や検討資料は必ず残しておきましょう。また、当然ですが、検討した結果決まったことも可視化しましょう。
「打ち合わせで何度も話しをして、何となく関係者の間で合意されていること」がかなり多いのが現実です。
目で見て指で指せるもの以外は全て未決事項、というくらいの考え方で、決定事項を可視化することを意識しましょう。
まとめ
今自分が関わっているプロジェクトに当てはめると、実は3つのコツが出来ていない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。場合によっては、上記3つのコツは理想論で現実的には時間がなくてここまでしっかりできない、という方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、時間がないからと言ってどれか一つでも妥協してしまうと、後々に何倍もの負債(手戻り)となって返ってきます。要件定義が上手くいかないと、プロジェクトの失敗率はぐっと上がってしまいます。
例え、上記3つのコツで上げた内容に対応するために時間がかかるとしても、要件定義フェーズのうちに対応しておくことをオススメいたします。
対応せず何となくプロジェクトを進めてしまうと、そもそも新システムを導入して会社が抱える課題を解決しようとしているのに「結局システムが変わっただけで、業務上の課題が残ったまま」という悲惨な現実が待っています。
もし社内リソースが足りない場合や社内ではノウハウがない場合は、コンサルタントやシステムベンダー等、外部の力を借りることを検討してみてはいかがでしょうか。
弊社でもプロジェクトマネジメントを行っておりますので、お気軽にご相談ください。 →無料で相談する
いずれにせよ、プロジェクトの成功率を上げるためには、早め早めの行動が大事です。
システムコンサルティングの事例紹介
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