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明石悠佳(あかしゆか)さん座談会|複業・働き方を考える

明石悠佳(あかしゆか)さん座談会|複業・働き方を考える

つい先日、三菱地所が自社社員への副業解禁だけでなく、ビズリーチのサイト上で新事業に携わる人材を副業・兼業限定で公募するというニュースがありました。昨年から副業を解禁する会社が増えていますが、弊社でも複業(※)採用や複業としてジョインするシステムエンジニアと共に案件を行っています。

※本業での収入を補うために行う補助的な仕事のことを「副業」と呼ぶのに対して、「複業」とは複数の仕事を持つことを指し、プロ意識をもって取り組み、仕事の相乗効果や新たな人脈の形成・今後のキャリアアップのための経験やスキル向上を目的としているものです。


複業をしていると、本業と複業における時間や収入のバランスのとり方が課題になってきます。この課題は、実際に複業をしている人でないと分からないことが多いということで、昨年お呼びした複業研究家の西村創一朗さんに続き、今回はサイボウズでご活躍されている明石 悠佳(あかし ゆか)さんをお招きして、エッグシステム社内限定の座談会を開催いたしました!

サイボウズ株式会社で「サイボウズ式」の副編集長として企画編集や企業ブランディングのためのコンテンツ制作を担当しながら、複業ではフリーランスの編集者・ライターとしても活動している明石さんから、時間の使い方から収入の話まで、リアルな話しをお聞きしました!

 

本当にやりたい仕事なのかどうか、理想と現実のギャップから時間の使い方を見直す

あかし ゆかさん(以下、あかしさん):
複業の仕事が忙しくなってきた頃からTwitterのフォロワーが増え始めました。
最初は自分が発信したくて発信していたし、複業もやりたくてやっていたはずなのに、いつの間にか「フォロワーさんが期待してるから」とか「クライアントさんが期待してくれるから」と思うようになっていました。期待に応える作業みたいになっていたかもしれないですね。
このときに「自分が頼まれていないのにやりたい仕事ってなんだろう」って考えたら、実はそんなに多くないというのは、体調を崩してしまった時に気付きましたね。当時は、言われてちょっと面白そうだったら、やっちゃうみたいな。「仕事依存症」のようになっていたかもしれません。 
 
高橋翼:
僕もいろいろとやりたくなってしまうので、分かります…。
でもあかしさんの場合は、体調を崩してしまい、ある意味、強制的に考えるきっかけがあったからこそ、今があるわけですね。
 
あかしさん:
そうですね。
 
高橋翼:
具体的にはどのように時間を見直していったのでしょうか?

あかしさん:
自転車操業的にやっている時は、自分の使ってる時間を見直したことは1回もないなと気づきました。その場しのぎの時間の使い方しかしてなかったので……。
そこで、改めて自分は1週間の中で、事実として、どういう時間の使い方をしているのかを全部書き出したんですね。
例えば、通勤2時間で、会社が8時間で、複業が何時間で……というように、全部洗いだしました。
 
その後、理想的な時間の使い方も同じく洗いだしました。自分が心身ともに健康でいられる時間の使い方ってどんなのかというのを書いたら、今の時間の使い方とめちゃめちゃギャップがあったんですよ。
これはサイボウズの「問題解決メソッド」のやり方に基づいています。問題とは理想と現実のギャップだという考え方です。
「ここが問題だから、こういう行動をしよう」というのを、1個1個のアクションにしないと無理だと思い、やっていきましたね。複業は週に10時間以内にすると制限を設けました。

高橋翼:
「複業を10時間に決めたけど、もう少しやってしまおう…」ということはなかったのでしょうか?
 
あかしさん:
体調管理と時間の使い方については、喫緊の課題だったので『またあの状態にはなりたくない』と思い、どんどんタスクを切っていきました。 すると、意外と仕事量を減らせるということに気付きました。
「頼まれていないのに、やりたい仕事なのかどうか」ということを考えるようになったら、1週間で10時間もあれば十分だなと思ったんですよね。
 
※あかしさんが実際に使っているタスク管理ツール(Notion)を見せてもらう


 

週3正社員という働き方

高橋翼:
そういった時期を経て、今は週3正社員に働き方を変更されたんですよね。サイボウズで週3正社員、残りは複業というスタイルでやってみて、実際のところどうですか?
 
あかしさん:
素晴らしく良いです(笑)。ベストバランスを見つけたと思っていますね。
今はサイボウズが週3なので、明確に「複業の時間は週◎時間」という管理をしていません。明確な管理をしなくても、今のバランスであれば、精神的にも肉体的にも健康でいられるなっていう感じがつかめてきました。
サイボウズは「働き方宣言制度」という制度があって。1人1人がこういう働き方をしたいって言ったら、1か月ごとに変えられるっていう制度があるんですよ。なので、週3がいいっていう人もいれば、週5だけど朝7時から夕方5時までが良いっていう人もいたりとか、逆に朝弱いから定時を13時から21時にするだったりとか、1人1人に合わせて時間や業務量を調整できる制度があるので、本当に自由にカスタマイズできます。
サイボウズでは元々、フルリモート、短時間勤務、長時間勤務、といったように時間と場所の掛け合わせで9分類の働き方から選ぶという仕組みがありました。しかし、サイボウズがチームワークを重要視してるので、100人9通りじゃないよね、100人100通りを目指そうということで出来た制度です。
 
高橋翼:
最近では、週4正社員ということを認める会社も徐々に増えてきていますが、正直なところ、週5から週4や週3に変えるのはお金のハードルが大きいなと思うんですよね。
あかしさんは週3正社員にすることを決断されたときは、収入よりも時間の方が大事だという考えだったのでしょうか?
 
あかしさん:
そうですね。トータルの収入は週5で働いて、複業もしていた頃に比べたら減るなと思いましたが、複業である程度稼げるという見積もりはあったので、大丈夫だろうという思いはありました。
貯金も今までしていましたし、それほどお金に困っている訳でもなかったので、今はお金よりも時間優先で考える時間が欲しかったというように結論を出しました。

 

案件ごとに得られるものを分解して優先度を決める

高橋光:
タイムマネージメントに関して、優先度の決め方を是非聞きたいです。
どういう判断基準で優先順位を決めていますか?

あかしさん:
案件ごとに得られるものを分解して考えています。例えば、この案件では会いたかった人に会えるとか、お金がもらえるとか、経験が得られるとか、スキルアップに繋がるとか。案件によって得られるものって微妙に違うと思うので、それを洗いだしていって、簡単な表にして見てましたね。
高橋光:
得られるものがいろいろある場合、あかしさんの中では、どれを優先的に決めていましたか?

あかしさん:
サイボウズ週5、複業10時間でやっていたときは、サイボウズで固定給がちゃんともらえていたので、お金よりも「やりがい」や「会いたい人に会える」ということを重要視していました。しかし今はサイボウズを週3に減らして、その減った分のお金は毎月ちゃんと稼いでいきたいという判断軸が増えたので、今はお金も重要視しています。その時の状況によって変わっているかもしれないですね。
 

「お金も大事にしているので、その金額では受けられません」とはっきる言うようになった


高橋翼:
お金に関して、若干生々しい話なるんですけど……週5正社員でやっていらっしゃったときは、お金的にはある程度満足していると思うのですが、そうすると、複業でやる仕事を単価を安く引き受けてしまうことがあるのではないかと思います。
自分としてはお金以外の楽しさや経験が積めるということに価値を感じていると、どうしても安く受けてしまうことがあると思っていまして、最初は安くても徐々に単価を上げていったのかどうか。あかしさんはどのようにやっていたのでしょうか?
 
あかしさん:
本当におっしゃる通りで、複業をやっている時は自ら「わたしサイボウズの仕事があるので、複業はお金のためにやってないんです!」って言っちゃうんですよ。
そうするとクライアントさんから「この人はやりがいさえあれば、お金は低くても受けてくれるんだ」と思われてしまい、結果安く受けてしまうということもありました。
ただ、週3正社員にしてから自然と単価が上がったんです。それは多分、自分から「お金のためじゃない」ということをあまり言わなくなったからなのかなって思ってます。あとは、「今は週3でお金も大事にしてるので、その金額では受けれません」ということははっきり言うようになりましたね。今の方が仕事の仕方的には健康的な気がします。やりがいはもちろん大切ですが、それとお金のバランスは、うまく取って働いていきたいなと思います。