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IPA「DX動向2025」を読み解く① ー日本企業の現状ー

昨年2025年は、経済産業省が提唱した「2025年の崖」でした。そこで、昨年は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が『DX動向2025』を公表しました。日本企業のDXの現状を、米国・ドイツと比較することで多角的に示した調査結果です。本コラムではその主なポイントを整理するとともに、実際に2025年を終えて、当社視点で振り返って考察してみます。

 

「DX動向2025」日米独比較で探る成果創出の方向性「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」へ
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2025.html

 

まずはIPAが公開した『DX動向2025』の内容を要約して解説します。

 

1.まず押さえるべき日本企業のDXの「現在地

IPAの調査によれば、日本企業のDXへの取り組みは着実に広がっています。何らかの形でDXに取り組む企業の割合は約8割に達し、米国企業とほぼ同水準です。企業戦略として「全社的なDX戦略を掲げて動いている」割合も、ドイツより高いという結果になっています。

しかし、「取り組みが進んでいる=成果が出ている」ではありません。実際の成果創出の実感に関しては、日本企業の約6割以下に留まっており、米国・ドイツでは8割を超える企業が「成果が出ている」と回答しているのに対して、日本はまだ伸び悩んでいます。

そのなかでも特徴的なのが、日本企業のDXは「内向き・部分最適」になっているという点です。

社内の業務や部分最適化にフォーカスする傾向が強く、価値創出や企業成長につながるDXへのシフトが十分とは言えない実態が浮かび上がっています。

 

 

2.日本企業のDXは「業務効率化」重視、成果評価の不十分さも課題

調査における大きなポイントは、日本企業がDXによる成果を「効率化・コスト削減」に偏重して認識しているという点です。

日本企業では「人件費等のコスト削減」や「製品提供までのリードタイム短縮」といった成果が目立つ一方で、利益増加や市場シェア向上といった“攻めの成果”は相対的に少ないという結果が出ています。

 

さらに、成果そのものを「把握できていない」と回答する企業も少なくありません。その背景には、

・そもそも成果指標を設定していない
・評価方法が不十分である

といった課題が挙げられています。“DXを進めたのに何が変わったのか”を社内で共有・評価できない状況が生まれている状況です。

この状況は、中小企業で特に顕著です。大企業に比べてDXへの取り組みが遅れているだけでなく、DXの意義・価値が経営層から現場まで共有されていないという根本課題も見えてきます。

実際に「DXのメリットがわからない」「情報や知識が不足している」という回答が多いことも背景として指摘されています。

 

3.「部分最適」から「全体最適」への転換がカギ

IPAレポートが強調する重要な点は、「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」へのDXへの転換です。社内効率化は進んでも、企業価値を高めるDXの実現には至っていない傾向があるためです。

全体最適なDXとは、単なるシステム導入や業務改善に終わるのではなく、ビジネスモデルそのものを見直す取り組みです。

DXは経営戦略そのものとして位置付けられ、売上・利益・顧客体験の変革につながることが本来の目的であるべきです。

 

4.DX成果を阻む日本企業の構造的課題

① 目標設定と成果評価の不備

日本企業では、DX施策の目的を明確に定めず、評価指標を設定していないケースが散見されます。

「成果がわからない」という回答が多い背景には、成果の評価指標が未設定であるという根本的な課題があります。目標と評価をセットにせずに取り組むことは、施策が戦略に紐づいていない状態と同義です。

 

② 経営層と現場の連携不足

調査結果では、経営層・IT部門・現場部門の連携が弱いことも明らかになっています。

日本企業はこの3者の協働が十分でなく、結果として部分最適な取り組みに留まりやすいのです。この課題は、戦略共有の不全やDX推進体制の見直し不足から起因しています。

 

③ DX人材の不足と育成

DXを実行する人材の不足も日本企業の大きな課題です。特に中小企業では、DXを推進する人材が不足しており、育成戦略も不十分という状況が継続しています。

また、ITリテラシーやデジタル技術への理解が経営層に十分浸透していない企業も多いと指摘されています。これは、組織文化や教育体系を含めた長期視点での取り組みが必要なテーマです。

 

5.日本企業に求められる「次の一手」

DX動向2025が示す最大の示唆は、「DXは戦術ではなく戦略である」という事実です。部分最適で終わっている現状を脱し、企業価値向上につながるDX実現のためには、以下の視点が欠かせません。

 

① 戦略としてのDX設計

DXは単なるIT投資やシステム導入、デジタル化に留まりません。企業戦略に紐づいた設計が必須です。

経営トップがビジョンを示し、それを共有しながら目標と指標を整え、全社の取り組みとして推進することが成功の出発点です。これがなければ、効率化に終始し、新たな価値創出につながりません。

 

② 組織横断の推進体制と協働文化の醸成

経営・IT部門・現場の三位一体の連携がDXの成果の差です。IT部門が単なるシステム管理者ではなく、戦略の実行者として参画し、現場と共に価値を創る文化が必要です。

 

③ 成果評価の仕組み整備

成果を創るには、定量・定性を問わず評価指標の設計が不可欠です。KPIとして売上・利益といった経営数値を設定するだけでなく、顧客満足度・市場シェアなど価値創出につながる指標設計を強化することが求められます。目標未設定は成果不明瞭と直結します。

 

④ DX人材の育成と活用

DXを実行する人材の確保・育成は継続的な投資です。人材育成は単なる研修ではなく、現場で実践する能力を育てることが重要であり、中長期戦略として組織全体で取り組むべきテーマです。

 

6.最後に・・・DXは「持続的価値創造の道具」

DX動向2025は、日本企業がDX取り組みの現状を俯瞰するうえで極めて示唆に富んだレポートです。

一方で、数字や傾向だけを見るのではなく、経営視点で価値創出につながる実装が今こそ求められています。

 

当社からも発信しているように、DXは目的ではなく手段です。業務効率化やコスト削減はその一部に過ぎません。DXを通じて市場価値を高めること、顧客価値を創出すること、そして企業として持続的な成長戦略を描くことこそが真のゴールです。

DXを「戦略」として捉え、現場と経営が一体となる取り組みを進めることが、2025年以降の競争優位性を確立する鍵となります。

次のコラムでは、2025年を終えて「DX動向2025」を振り返ります。

 

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