コラム
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?DXレポートから中小企業での活用方法まで解説
先日、友人と一緒に買物をしていたときのことです。
入ったお店ではクレジットカードなどが使えず、現金のみ利用可能でした。すると、一緒にいた知人から「このお店、レジで現金しか使えないから他のお店へ行こう」と言われました。
この消費行動はとても現代的で面白いな、と個人的に感じました。また、思い返してみると私自身も、現金しか使えないお店を敬遠することがあるという点にも気づきました。
お店としては、キャッシュレスに対応していないことによって機会損失が生まれたわけですから、キャッシュレスへの対応が売上に直結していることが分かります。
このように、キャッシュレスや昨今話題の◯◯Payなど、新しいテクノロジーが売上や経営に直結していくケースはこれから益々増えていくのではないかと考えられます。
また、これはキャッシュレスに限った話しではありません。最近では「ビッグデータ」「AI」を始めとする、様々なデジタル技術が進歩し、実用されてきています。なぜなら、デジタル技術への対応を進めることにより、前述した売上に直結したり、自動化により大幅な業務効率化にも寄与することができるためです。
こういった進化したデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革することを「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と言います。
「デジタルトランスフォーメーション(DX)」については、2018年5月に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置し、DXレポートやガイドラインを立て続けに発表したことをきっかけに、徐々に浸透していっています。
そこで本コラムでは、経済産業省が発表している『DXレポート(~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜)』の内容を解説するとともに、実際にデジタルトランスフォーメーション(DX)へ対応していくために中小企業が行うべき具体的な取り組みについて、コラムでまとめました。
前編となる本コラムでは、『DXレポート(~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜)』の内容を10分で理解できるように、簡単に解説いたします。
DX(デジタルトランスフォーメーション)レポートと現状の課題
まずはじめに、経済産業省が公表している資料はこちらです。
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
このDXレポートの中では、現状の課題と課題に対応できなかった場合にぶつかる”2025年の崖”、DXへ対応するための実現シナリオ、DXの推進に向けた対策について記載されています。
このレポートの中では、
「DXへの対応が進められないと、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある」
と論じられています。
同レポートによると、2025年には稼働開始から21年以上を経過した基幹システムを抱える企業が約6割を超え、IT予算のうち既存システムの維持管理費用の割合が9割を超える、とも言われています。
これを“2025年の崖”と呼んでいます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応が進められない理由
ではなぜ、各社はデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応を進めることができず、”2025年の崖”をむかえてしまうのでしょうか?
それは、既存システムが以下の課題を抱えていることが大きな要因であると述べられています。
◯既存システムに対して過剰なカスタマイズがされていて、システム仕様がブラックボックス化している
◯既存システムが事業部ごとに構築され、全社横断的にデータが活用できない
◯過去に構築したシステムを使い続け、保守できるシステム会社や人員が限られているため、システム維持コストが高額になっている
◯保守運用の担当者不足により、サイバーセキュリティやシステムトラブル等によるデータ滅失のリスクがある
10年以上前に構築した基幹システムを、今もなお使い続けている中小企業は数多く存在するため、上記の課題を抱えている企業が少なくありません。
こういった課題をそのままにしていると、、、
◯システム仕様がブラックボックス化しているため、既存システムやデータを活用しようとしても現状調査に時間がかかる
→現状が分からないため、システムやデータをどのように活用するかという実現可能な方針を立てられない(または非常に時間がかかる)
◯既存システムが事業部ごとに分断し、各システムでバラバラのコード体系となっているため、顧客データを一意にすることができない
→既存システムにデータ自体は蓄積されているが、重複データなどがあり、そのままでは有効に活用できない
◯システム維持コストが高額のためリプレイスしたいが、現行システムがブラックボックスである上、対応できる人材がおらず、既存システムを使い続けざるを得ない
→新しいシステムへの投資ができない
といったことが起こります。
すると、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応ができなくなってしまいます。
既存システム(レガシーシステム)が抱える課題
下記の調査結果を見ても分かるとおり、既存システム(レガシーシステム)が抱える課題はどれもDXに向けて解決する必要のあるものばかりです。
また、メインフレームからは脱却していたとしても、全体のシステム構成やデータ設計の見直しがされないままリプレイスすると、「中途半端なオープン化」や「オンプレの単純なクラウド化」となり、根本的な課題解決には繋がりません。
(出典)経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』
では、デジタルトランスフォーメーション(DX)へどのように対応していけばよいのか?
経済産業省のDXレポートでは、大きく2つのフェーズに分けて段階的な対応を推奨しています。
①システム刷新:経営判断/先行 実施期間【~2020】
②システム刷新集中期間(DXファースト期間)【2021〜2025】
①システム刷新:経営判断/先行 実施期間【~2020】
「AI」「ビックデータ」といった新しいデジタル技術を導入したとしても、既存システムがブラックボックス化したままで既存システムの適用が不十分だと、基盤となるデータの利活用・連携が限定的となるため、その効果も限定的になってしまうケースが多くあります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上では、効果を最大化するために、最大限にデータを活用する必要があり、その適用のために既存システムを対応できる形に見直していく必要があります。そのため、既存システムのブラックボックス化を解消し、データを活用できる状態を目指すために、以下の対策が必要となります。
◯情報資産の見える化
既存ITシステムの現状を調査・診断し、「IT成熟度」「データの利活用状況」「現状の課題」を明らかにします。
◯計画の策定
既存システム刷新後に実現すべきゴールイメージを策定した上で、スケジュール・投資費用などを決めて、システム刷新に向けた計画を策定します。
②システム刷新集中期間(DXファースト期間)【2021〜2025】
①で策定した計画に基づき、システム刷新・新システム導入などを実行します。また、並行してデジタルトランスフォーメーション(DX)を実行することのできる人材の育成・確保も進めていきます。
◯システム刷新の実行
経営戦略を踏まえたシステム刷新やデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応を経営の最優先課題として、計画を実行する。
◯DX人材の育成・確保
ユーザ企業側では、ビジネス変革で求める要件をシステム要件へ落とし込める人材、システムベンダー側では、最新のデジタル技術を理解し、業務内容にも精通する人材、を確保できるようにします。
ここまでが経済産業省が公表する『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』に記載されている内容のサマリーです。
中小企業が具体的に取り組むべきタスクや、システム刷新に向けてどういった点に注意していくべきか、という内容については、次回のコラムの「後編」でご紹介させて頂きますので、よろしくお願いいたします。
なお、弊社では中小企業向けに「システム分析・診断サービス」「IT戦略・IT投資計画策定サービス」を行っていますので、もしご興味があれば、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
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