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【2022年1月改正】電子帳簿保存法の改正で電子取引のデータ保存が義務化

【2022年1月改正】電子帳簿保存法の改正で電子取引のデータ保存が義務化

2022年1月から電子帳簿保存法の改正が適用されます。
電子帳簿保存法は、過去に何度も改正が行われ、改正の都度要件が緩和されていったのですが、それでも要件が厳しく、2020年時点で電子帳簿保存法を適用している企業はわずか4,000社程度でした。日本国内の企業のうち0.15%しか適用していない状況でした。

しかし、昨今のコロナウィルスの感染拡大によるリモートワークの普及によって、脱はんこと共にペーパーレス化が推進されるようになり、電子帳簿保存法も大幅に改正されることになりました。

今回の改正によって、電子取引(EDIを使った取引、発注書や請求書等をPDFで送付する等)において電子データとしての保存が義務化され、紙の保存が認められなくなりました。これは電子帳簿保存法の適用を検討していない企業でも守らなければならないルールですので注意が必要です。

本コラムでは、2022年の改正内容の概要から、電子データの保存義務化について、具体的なケースを交えて分かりやすくまとめました。「電子帳簿保存法の適用は考えていないから関係ない」と思っている方も、必ずご確認いただければと思います。
 
=======〈目次〉=======
電子帳簿保存法とは?
2022年の電子帳簿保存法の改正内容
 (1)事前の申請・承認制度の廃止
 (2)検索要件の緩和
 (3)タイムスタンプおよび適正事務処理要件の緩和
 (4)電子取引の電子データ保存が義務化
電子取引は電子データ保存が必須
 改正後の電子取引で守るべき要件
 現行運用の見直しが必要なパターン
 具体的な対応方法
 不正行為のペナルティに注意
義務化への対応と合わせて業務効率化へ
=================================
 
  

電子帳簿保存法とは?

 
まずはじめに、電子帳簿保存法の概要を簡単に解説します。

電子帳簿保存法とは「国財関係の帳簿・書類を電子データとして保存できることを認める法律」です。本コラムで詳細は割愛しますが、電子帳簿保存法の中にも3つの種類があり、それぞれに要件があります。

(1)自己が作成する帳簿・書類 → 電子帳簿保存
(2)取引先から受領する紙の書類 → スキャナ保存
(3)取引先から受領する電子データの書類 → 電子取引

電子帳簿保存法とは?

具体的な帳簿や書類は下記表のとおりです。
電子帳簿保存とスキャナ保存については、事前に税務署への届出・申請が必要です。

電子帳簿保存法とは?

2022年の電子帳簿保存法の改正内容

2022年の改正における4つのポイントを解説します。

2022年の改正における4つのポイントを解説します。
 

(1)事前の申請・承認制度の廃止

 
上述のとおり、電子帳簿保存とスキャナ保存を適用させるためには事前に申請し、税務署の承認を得る必要がありましたが、申請・承認制度が廃止されます。
 
◯改正前
・導入を希望する時期の3ヶ月前までに税務署へ承認申請書を提出する。
・税務署から承認された場合、電子帳簿保存法の適用が可能。
 
◯改正後
・国が認める基準を満たすことができれば、いつでも適用が可能
 
改正前の現在は、事前に下記の承認申請書を提出しなければいけないため、非常に面倒でしたが、改正後は要件を満たせばすぐに電子保存できるようになります。

事前の申請・承認制度の廃止

(2)検索要件の緩和

 
検索要件は1つだけになり簡素化されました。ただし、「職員の求めに応じられること」という税務調査が入ったときの要件を満たす必要があります。細かい定義はされていませんが、税務調査で複雑な検索を求められることは考えにくいので、クラウドやパッケージの会計システムを使っていれば概ね問題ないと考えられます。
 
◯改正前
・取引年月日、勘定科目、取引金額、その他帳簿の種類に応じた主要項目で検索できる。
・日付または金額については、範囲を指定して検索できる。
・2つ以上の任意の項目を組み合わせて検索できる。
 
◯改正後
・取引年月日、勘定科目、取引金額で検索できる。
・税務職員のダウンロードの求めに応じられる場合は、「日付または金額の範囲指定検索」「2つ以上の任意項目の組み合わせ検索」は不要
※売上1,000万円以下の事業者は全ての検索要件が不要。
 
 

(3)タイムスタンプおよび適正事務処理要件の緩和

 
電子データの保存にあたって、電子的な時刻証明機能の役割を果たすタイムスタンプの付与が必要です。タイムスタンプが付与されることで、それ以降に改ざんがされていないことの証明になるためです。

改正前は、書類を受領した人が自署した上で、3営業日にタイムスタンプを付与しなければならず、期間的な余裕がないため、実運用には厳しいルールが課せられていました。ところが改正後は、自署が不要でタイムスタンプは2ヶ月以内に付与すればよいなど、大幅に要件が緩和されました。
 
◯改正前
・書類を受領した人とスキャン保存する人が同じ場合は自署が必要
・3営業日以内にタイムスタンプを付与する
・2名以上の相互牽制体制を組む
・年に1回以上の定期的な検査を行い、検査後には原本を廃棄してよい
 
◯改正後
・自署は不要
・2ヶ月以内にタイムスタンプを付与する
 ※訂正・削除ができないシステム、または訂正・削除の履歴を確認できるシステムを使えばタイムスタンプは不要
 ※相互牽制体制と定期的な検査は不要

タイムスタンプおよび適正事務処理要件の緩和

(4)電子取引の電子データ保存が義務化

 
電子取引とは「取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう)の授受を電磁的方式により行う取引」のことです。具体的には、EDI取引の場合や、PDFファイルを電子メールで受け取る場合、Webページからダウンロードして受け取る場合などが該当します。

改正前は、電子取引であっても紙で書類を保存することも容認されていましたが、2022年1月以降に扱う電子取引からは紙に出力して保存することが廃止され、電子データ保存が義務化されました。

この点は全ての企業に対して課せられる内容ですので、次章で詳しく解説します。
なお、電子取引については、改正前から税務署への事前申請は不要でしたので、申請が不要である点は改正後も変わりません。
 
◯改正前
・電子データでも書面(紙)でも、どちらを保存することも可能
 
◯改正後
・電子データで保存しなければならない
 
 

電子取引は電子データ保存が必須

電子取引は電子データ保存が必須

電子取引においては電子データの保存が義務化されますので、全ての企業が対応しなければいけません。

 

改正後の電子取引で守るべき要件


改正後の電子取引で求められる要件は以下の(1)〜(4)です。
 
(1)以下の措置のいずれかを行うこと
①書類を発行する側(送信者)がタイムスタンプを付与してから送付する
②受信者がデータ受領後、タイムスタンプを付与し、かつ保存した担当者または責任者の情報を残す
③訂正・削除を行った場合に履歴が残るシステムを使う、あるいは訂正・削除が行えないシステムを使う
④訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、規定に沿った運用を行う

(2)操作マニュアルを備え付け、ディスプレイ等で確認できること
(3)システムの概要書を備え付けること
(4)検索機能を確保すること(※)
※「2022年の電子帳簿保存法の改正内容(2)検索要件の緩和」で記載した検索要件と同じ。
 
この中でも特に(1)の要件がポイントとなります。
まずは、具体的にどういったケースで見直しをしなければいけないのか解説します。
 

現行運用の見直しが必要なパターン

 
①メールにPDFファイルが添付されているケース →見直しが必要

これまでは、たとえメールでPDFファイルを受領しても、別途紙の書類を受領したり、PDFファイルを印刷して保存したりすることが認められていました。しかし、改正後はメールで受け取った場合は、上述した4つの要件を満たした上で電子データとして保存しなければいけません。
 

②領収書をECサイトからダウンロードして印刷しているケース →見直しが必要

経費の領収書を保管するために、Amazon等のECサイトで領収書をダウンロードし、印刷して保管している場合は、紙の書類保管が認められませんので見直しが必要です。①と同様、4つの要件を満たした上で、電子データとして保存しなければいけません。
 

③Webサービス等で書類をダウンロードしているケース →見直しが必要の可能性あり

利用するWebサービスが4つの要件を満たすかどうか、確認が必要です。
例えば、(4)の検索機能の要件を満たしていない場合、このままでは電子取引の要件を満たせないため、システムをリプレイスするかカスタマイズするなどの対応が必要です。
 

④紙の書類だけを受領しているケース →見直しは不要(電子取引の対象外)

紙の書類だけを受領している場合は、電子取引に該当しませんので、今回の電子データ保存の義務化に伴う見直しは不要です。これまで通り、紙の書類を保管しつづける運用で問題ありません。
 
 

具体的な対応方法

具体的な対応方法

電子取引で課せられる要件を踏まえると、各企業では下記いずれかの対策を取らなければいけません
電子帳簿保存法を適用させるかどうかに関わらず、対策しなければいけません
ので十分ご注意ください。
 
 
①電子取引の要件を満たすシステムで電子データを管理する

これが最も効率的で理想的な対応方法です。
最近のクラウド型の会計システム等では電子帳簿保存法に対応しているシステムが多いのですが、自社で使っているシステムがの電子取引の要件を満たしているかどうか、システム会社へ確認すればすぐに分かりますので、まずは確認しましょう。
 
②規程を作成して運用で対応する

システムを使うのが理想ではありますが、システムのリプレイスや新規導入が発生する可能性があり、どうしてもコストと期間がかかってしまいます。そこで、抜け道的な対応が規程です。電子取引の要件には「訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、規定に沿った運用を行う」との記載がありますので、規程を作成して運用するだけで対応ができます

規程の内容については、国税庁がサンプルを公開しているので、こちらを活用することですぐに作成ができます。

国税庁:電子帳簿保存法関連 参考資料(各種規程等のサンプル)
 
③電子取引をやめて紙で取引して保存する

推奨できないやり方ですが、上記ルールを守れないようであれば、取引自体を紙で行い、紙のまま保存する方法でも対応可能です。ただ、業務効率の視点では手間がかかりますし、電子帳簿保存法の背景にはペーパーレス化の推進がある中で、紙にするというのはあまりオススメできないやり方です。
 

不正行為のペナルティに注意

 
ルールを守らず隠蔽などの不正行為が発覚した場合は、ペナルティとして重加算税の10%が加算されます。
要件の大幅な緩和が行われる一方で、不正を行った場合のペナルティが課される点には十分注意が必要です。

ただし、あくまでも意図的に不正行為を行った場合のペナルティですので、ルールを守ろうとした結果、意図せず不備が発生してしまった場合は、ペナルティが課されるわけではありません
 
 

義務化への対応と合わせて業務効率化へ

 
電子帳簿保存法の2022年改正について解説しました。
特に電子取引については、電子データの保存義務がありますので、要件をよく確認し、早めに運用の見直しを行い、2022年1月に備えることをオススメします。

電子データの保存義務化については、必須で対応しなければいけないことですが、運用を見直すタイミングで「効率化できる業務がないか業務フローを見直す」「要件に合ったシステムを導入するのと合わせて、他の業務も効率化する」といった業務の見直しも行ってみてはいかがでしょうか

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