45万人のIT人材不足は起こるのか?現役システムコンサルタントが解説する原因とIT人材余剰の事実

人材

「2030年に45万人もIT人材が不足する!」
 
こういった危機を煽るような記事をよく目にします。
これは経済産業省が公表している数字ですので、もちろん信頼できる情報です。
 
しかしその一方で「本当に45万人も不足するのだろうか…」という思いもあります。脱ハンコやペーパーレス化、テレワークの推進といったデジタル化を次々に進めようとしていく中で、45万人ものIT人材が不足したらデジタル化が全く進まないように思えてしまいます。

IT人材不足に対して一部の調査結果だけにフォーカスされている記事が多いと思いましたので、事実をもとに様々な角度から「IT人材不足問題」について整理しようと思います。

 
  

「IT人材不足」とは?45万人が不足するという根拠について

 
「45万人が不足する」というのは経済産業省が公表している「IT人材需給に関する調査」に基づくデータです。

IT人材需供に関する調査では、需要の伸び率によって3つのシナリオが提示されています。IT人材の需要は市場の景気に左右されるため、過去の人材需要と人材供給のギャップをもとに、3つのシナリオで試算されています。
中位シナリオにおいて「45万人が不足する」という調査結果が出ています。
 
・需要の伸びが約3〜9%の場合:約79万人が不足(高位シナリオ)
・需要の伸びが約2〜5%の場合:約45万人が不足(中位シナリオ)
・需要の伸びが約1%の場合:約16万人が不足(低位シナリオ)
 
IT人材需給に関する調査

※出典:経済産業省 平成30年「IT人材需給に関する調査」

 

  

IT人材不足の原因に関する"勘違い"

 
IT人材が不足する原因について、IT業界へ就職する人数が多くないからだ、と述べられていることがあります。
給与に対する満足度が低い、IT業界に対するイメージの悪さ(最近の若い方は知らないと思いますが「きつい」「給料が安い」「帰れない」の頭文字を取って"3K"と呼ばれていました…)といったことが影響している、という見解です。
 
しかし、本当にそうでしょうか?
 

プログラミングを学ぶ人が増えている

 
私の身の回りでは「(日々新しい技術への勉強は必要だが)システムエンジニアとして手に職を付ければ、ある程度の収入を確保でき、かつ今後職を失うリスクが低い」といった考えを持ち、プログラミングスクールへ通い、未経験からIT業界へ転職する方が増えています。

GMOメディアが運営するプログラミング教育メディア「コエテコ」が、船井総合研究所と共同で調査した結果によると、プログラミング教育市場規模が大きく拡大していることから、プログラミングを学ぼうとしている人は増加傾向にあることが分かります。
 
プログラミング教育市場規模

※出典:2018年 子ども向けプログラミング教育市場調査

 
  

IT業界への就職割合は増えている

 
IT人材への就職割合の増減変化率(IT業界へ就職者数/全ての業界における就職者数)に関しても、近年 IT 人材への就職割合が上昇しています。IT業界への就職者数は年々増加しているのです。
 
就職者数及び IT 人材としての就職割合

※出典:経済産業省 平成30年「IT人材需給に関する調査」

 
 
 

IT人材不足の本当の原因とは何か?

 
プログラミングを学ぶ人が増加し、IT業界への就職する人数が増えているにも関わらず、最大で79万人ものIT人材不足が起こる本当の原因とは何でしょうか。3つの理由が考えられます。

 

理由1:IT市場規模が毎年成長し続けている

 
2018年に矢野経済研究所が調査した結果によると、国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、2018年度が前年度比2.8%増の12兆4,930億円、2019年度が前年度比3.4%増の12兆9,180億円、2020年度は同1.6%増の13兆1,240億円、2021年度は同1.5%増の13兆3,200億円と予測されています。
このようにIT市場規模全体が年々増加していることが一つの要因です。
コロナウィルスの感染拡大に伴い、最近では行政でも「脱はんこ」「ペーパーレス化」が進められていますので、予測以上に市場規模が拡大することも容易に想像できます。
 
国内企業のIT投資に関する調査

※出典:矢野経済研究所「国内企業のIT投資に関する調査を実施(2019年)」

 
 

理由2:社員の高齢化による退職者数が多い

 
2015年の国勢調査の結果より、IT人材における50歳以上の割合は17.5%を占めていることが分かります。
 ・50〜54歳:10.5%
 ・55〜59歳:4.9%
 ・60〜64歳:2.1% 
 
IT人材の年齢分布の推移

※出典:経済産業省 平成30年「IT人材需給に関する調査」

 
10年後の2030年には、50歳以上の方が引退することを考えると、2015年時点のIT人材の17.5%に相当するIT人材数約17.5万人が減少することになります。一方、昨今の少子高齢化により、これから新卒でIT業界へ就職する人数は絶対数としては小さくなります。
入ってくる数と出ていく数にギャップがある、ということが2つ目の要因です。
 
 

理由3:新しい技術が出ることで需要が増え続ける

 
IT技術は日進月歩で進んでいます。身近なところで言えば、10年前はここまでスマートフォンが普及していませんでしたし、スマートフォンの小さな画面で無料の動画が自由に見られて、テレビが不要になるなんて20年前は思ってもいませんでした。
 
IT人材不足というのは「需要」に対して「供給」が追いついていないというギャップを表す数値ですので、新しい技術を取り入れたい企業の需要が増える一方で、それに対応できるIT人材が少ないということを表しています。
最近では「IoT(Internet of Things:様々な「モノ」がインターネットに接続され相互に制御する仕組み)」「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」など、新しい技術が出てきていますが、これらの技術を扱うことのできるエンジニアの数はまだまだ少ないのが実情です。
 
新しい技術が出続ける限り、こういった需要と供給のギャップは必ず起こってしまいます。なぜなら、新しい技術を学ぶためには情報やノウハウが少なく、時間がかかるためです。
これがIT人材不足が起こる3つ目の要因です。
 
 
3つ目の原因から分かることは、IT人材不足というのは、IT技術を扱える人材をただ増やせば解決するものではない、ということです。新しい技術を使いこなせる人材を増やしていく必要があるということです。
 
 
これは「量」の問題だけではなく「質」の問題とも言えます。
(人としての質ではなく、あくまでも扱うことができるIT技術に関する質だけを指しています)
 
 
「IT人材が不足する」という課題に隠された事実は、「質」の高いIT人材が不足するという点で、実は従来のIT人材は余剰するという調査結果が出ています。余剰するという話があまり論じられていないため、その点も解説します。
 
 

IT人材不足は質の不足であり、余剰するIT人材が22万人いる

 
以前こちらの記事でも書いたのですが、余剰するIT人材がいるということが経済産業省の調査結果に記載されています。
 

IT人材不足の課題へ対応する|社員数100名以下の中小企業向け『コンサルティングエンジニアサービス』でリソースとノウハウを提供
https://eggsystem.co.jp/column/20200909-consulting-engineer

 

IT人材の需供ギャップ

※出典:経済産業省 平成30年「IT人材需給に関する調査」

 
従来型IT人材とは、従来から必要とされるIT人材のことで、ITシステムの受託開発や保守・運用サービスなどに従事する人材を指します。従来から継続的に行われている運用・保守を行うだけのIT人材は最大22万人が余剰するということが調査結果から出ています。
(運用保守に従事していてもDevOpsなど、新しい取り組みを行ったり、新しい技術を取り組んでいる場合は含まれません。"従来から変わらず同じことを行っている"という人材を指します。)

なお先端IT人材というのは、DX、ビックデータ、IoTなどの先端IT技術に携わる人材を指します。
 

新しい技術に取り組む人材は不足しますが、従来から変わらず同じことをやっているIT人材は余剰するということが「IT人材需給に関する調査」で公表されている事実です。
 
 
 

〈最後に〉質の高いIT人材とは?中小企業が求めるIT人材について

 
質の高いIT人材と具体的にどういったスキルを持つ人材なのか、中小企業向けの調査結果を元に解説します。
 
従業員数300名以下の企業がIT人材に対して求めていることは以下の3つです。
2位の高い技術力を持った人材とは、まさに「先端IT人材」ですね。
 
中小企業が求めるスキル

※出典:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「IT人材白書2018」

 
1位の「IT業務の全般的な知識・実務ノウハウ」や3位の「経験をベースにした問題解決力」を兼ね備えた人材が、質の高いIT人材と言えるのではないかと思います。

つまり、高い技術力を持っているだけではなく、業務にも精通しており、経験をもとにした問題解決力のある人材こそが求められているということが分かります。
 
当社では、売上拡大や業務効率化を目的としてITシステムを活用するために、システム化の企画から開発・運用まで一貫して対応しています。これが実現できている理由としては、当社メンバー全員がシステムエンジニアとして開発経験を積み、システムコンサルタントとして課題解決の経験を積んでいるからです。
 
中小企業が求める「IT業務の全般的な知識・実務ノウハウ」「高い技術力(IT)」「経験をベースにした問題解決力」を兼ね備えているいる人材として、広汎な知識と経験で最大限のパフォーマンスを発揮することができますので、ご興味のある方はこちらをご覧になっていただければ幸いです。
 
 
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